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南の国から

December 3, 2008 11:50 AM

金、金、金。

街を歩けば強請られ、物乞いの売り物を買ってあげると少ないと、チッと舌打ちされる。

タクシーは、メーター金額を払ってるのにいい時計(現地特産ニセックス)してるから、

もっと金出せ、と降車させてくれない。

何をするにも金よこせ。

ここは10年近く前のベトナム、ホーチミン市。

むせ返る人。底が浅い詐欺。働かない人々。

ふう、と一息ついてると、”こんにちは”と流暢な日本語で話かけてくる。
親しくなった日本在住ベトナム難民の南さんという女性。
中国ならまだわかるがベトナム語の当て字でなぜミナミになるのかはわからん。

たまたま里帰りしてた南さんと歩くと、すべての価格、サービスが今までと反転したように友好的になる。

ここまで来たら海が見たい、遠くへ行きたいと、現地人経営、寂れたレンタルバイク屋へ向う。

一人で交渉した時よりも10分の1の価格。外国人はパスポートも必要と言われてたのがパスポートも不要に。とんでもない、こんな場所で誰がパスポートを預けられようか。

バイクに跨がりさあ、海へ行こう。と2人乗り。と、かっこよく言ったもののスーパーカブ風の50cc。

08年現在はどうか知らないが、何人で乗っても良いとの事。とうちゃんかあちゃん、
子供2人という曲芸師的な原付も多数確認。

回遊魚の大群の様なバイクだらけの道路を走り、交通量が減り、生春巻きの皮を干す田園風景が広がってくる。
警察にとめられたって、少ない紙幣で解決してしまう。

さすがベトナムのバイク。レンタルバイクなのにまったくもって整備されてない。
近くの民家で修理しながら、海、ベトナム戦争時の施設等をめぐり、楽しい時間はすぐに無くなりその帰り道。

整備されて無いバイクにタイヤの溝なんて残ってない。清掃されてない道路は土ボコリだらけ。

交通ルールなんて誰が守る?そんな時、突然のスコールに信号無視の大型トラック。

ブレーキをかけ、ズルっと滑る感覚が今でも鮮明に思い出せる。

やっちまった。異国に来てまで事故か。しかも後部シートには女の子。

こんな場所で大怪我なんてしたら一体どうなるのか想像すらつかない。

地面を滑って行く自分と南さんとバイク。

ズザザザザ、とスローモーションの視界になる。

どうだろう?怪我は平気か?後続車に弾かれやしないか?滑りながらも目線は南さんを追う。

幸い、お互いに擦り傷程度で済み、無事を確認したとともに、急な安堵感と疲れから、意識が朦朧とする。
立ってられなく、意識が遠のいてくる自分。情けない。

しばし時間が経ち、頭がはっきりしてくると、ここはとある民家。横になり果物をいただき介抱される自分。日本へのフライトの時間は残り数時間。早く行かなくては。ここは金、金、何かすれば金よこせの国。高くつくぞと思い、財布をだす。

言葉はわからないが何か怒ってる。と、言うよりあきれている。おそらく困った時はお互い様みたいな事を行ってるのだろう。介抱してくれたあげくに手みやげまで持たされ、民家を後にする。

何するにしても”金よこせ”な中、なんでも金がお礼だと思ってしまった自分の卑しさと、現地の人の言葉も通じない赤の他人の自分への無償の親切さに、今でも感慨深くなる。

日本に帰った後も幾度か南さんとは連絡を取り合っていた。
南さんから定期的に送られてきたネップモイという酒。

今でもベトナム料理店やアジア酒場でネップモイのロックグラスを傾ける度に、ああ、そんな事もあったなあ、と、思いにふける自分がいる。

そう、これは自分が好きなネップモイの外部広報。
輸入代理店様がこのコラムに気付き、好きなこの酒が送られて来る事を期待してます。

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浅野 俊一郎

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